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この話は、三平の3年目の話です(全体の地図を見る →)

第3部 3年目 売上より利益。身軽にして現金化 第1話

売上100万円より、経費100万円のほうが簡単

3年目の4月。広告の見積もりを前に、僕は売上100万円増の計画を立てていた。楊さんは聞いた。「その100万円、いくら残る?」。利益を目標にした、最初の日。

店の受付の机で、電卓を持つ手と、閉じた帳簿に置いた手

01 4月、広告の見積もりを前に、電卓を叩いていた

3年目の4月。受付の机に、広告会社の見積もりが置いてありました。月15万円で、新しいお客様が月に30人。担当の方は、感じのいい人でした。僕は電卓を叩きました。30人、客単価8,000円、月24万円。年で、売上が約290万円増える。担当の方は「3か月で元が取れます」と言いました。その計算も、僕の電卓と同じでした。

その夜の発表会で、僕は宣言しました。「今年は売上を100万円上げる。まず広告から」。紙に書いた目標は「売上」の一言でした。

ナオミさんが、手を挙げました。「オーナー、その30人、誰が切るんですか」。塚ちゃんが続けました。「土曜はもう、いっぱいです」。和子さんは、薬剤の棚を見ました。「薬剤も増えますね」。

僕は答えられませんでした。売上を増やす計算はしていた。その売上を出すのに何がいるかは、数えていなかった。電卓は、売上を増やす計算は得意です。でも「何が引かれるか」は、自分で打たないと出てきません。

増やす計算はした。何がいるかは、数えなかった。

「売上を上げよう」と決めたとき、その売上を出すために何がいるか、数えたことはありますか?

02 売上を1円増やしても、利益は1円増えない

放っておくと、何が起きるか。売上100万円を追いかけると、広告費が出ていきます。お客様が増えれば、薬剤も増えます。スタッフの時間も増え、残業代になる。そして、僕の腰にきます。

利益は、売上から経費を引いた残りです。利益率10%の店は「優良企業」と言われます(経営の一般論)。売上2,000万円の僕の店なら、利益200万円。この利益を100万円増やすのに、道は2つあります。

1つは、売上を増やす道。増えた売上から、広告費と薬剤と残業代が引かれます。僕の店の試算では、売上100万円を増やしても、利益に残るのは50万円ほどでした。

もう1つは、経費を減らす道。経費を100万円減らすと、利益は100万円、そのまま増えます。引かれる物がないからです。同じ100万円でも、利益への効き方が2倍違う。

講座の言葉に、「頑張っているけれど貧乏な経営者が一番多い」があります。売上を追いかけて、利益を見ていない。2年前の僕が、まさにそれでした。

同じ100万円で、利益への効き方が2倍違った。

03 「その100万円、いくら残る?」

明るい喫茶店の窓際。話す楊さんの後ろ姿

週末、見積もりを持って楊さんに会いました。喫茶店のカウンター。広告の話をすると、楊さんは見積もりを見ずに、聞きました。「その100万円、いくら残る?」。

「えっと、広告費が年180万円で」「売上100万円のために、180万円?」「いや、290万円増える計算で」「来れば、だね」。楊さんは、コーヒーを一口飲みました。

「2年目に言ったよね。売上は、いちばん高い買い物だよ。お金と時間と労力がかかる。しかも、買っても来るかどうかは分からない」。

「じゃあ、経費を100万円減らしたら?」「100万円、そのまま残ります」「どっちが簡単?」「経費です」「どっちが先?」「経費です」。僕は、自分で答えを言っていました。

楊さんは、こう付け足しました。「売上を上げるなとは言わない。順番の話。無駄を減らしてから、広告を打つ。そうすれば、同じ広告費で、残る利益が増える」。

売上を上げるなではなく、順番の話。

04 利益を100万円増やす、2つの道

楊さんとの話を、表にしました。売上を100万円増やす道と、経費を100万円減らす道。要る物、時間、体力、確からしさ、そして利益に残る額。

利益を100万円増やす2つの道の比べ表:売上を100万円増やす=広告費・新しいお客様125人・薬剤・スタッフの時間・施術で約190時間・腰にくる・来るかは分からない・利益に残るのは約50万円(試算)。経費を100万円減らす=1年分の経費の一覧と紙1枚・数時間・体力は要らない・来月からそのまま減る・利益に100万円そのまま

売上の道。客単価8,000円なら、新しいお客様が125人いります。1人1.5時間として、施術だけで約190時間。広告費30万円、薬剤10万円、残業代10万円を引くと、残るのは約50万円(試算)。しかも、広告を出しても来るかどうかは分かりません。190時間は、1日8時間なら24日分。僕の月の休みが4日なので、半年分の休みに当たります(試算)。

経費の道。要るのは、1年分の経費の一覧と、紙1枚。見直しに数時間、やめる手続きに数日。やめた分は、来月からそのまま減ります。利益に残るのは、100万円。

片方は、腰にくる。片方は、こない。利益という同じゴールに、こんなに違う2本の道があることを、僕は8年間知りませんでした。

同じゴールに、腰にくる道と、こない道があった。

05 目標を「売上」から「利益」に書き直した

明るい店の廊下で、照明のスイッチを切る手

次の発表会で、僕は紙を書き直しました。「売上100万円」を消して、「利益100万円」。5つの数字の順番も変え、利益を一番上にしました。広告は、やめませんでした。ただ、月15万円を月7万円に下げ、始めるのは経費を見直したあとにしました。見積もりの担当の方には、「経費を見直してから、半分の額で始めたい」と正直に伝えました。「順番ですね」と、分かってくれました。

和子さんが言いました。「じゃあ来月、経費の棚卸しやりましょう。薬剤だけじゃなくて、全部」。塚ちゃんは「使ってないサブスク、ありますよね」と笑いました。僕は、思い当たる物が3つ、すぐに浮かびました。

家に帰って、妻に表を見せました。妻は「腰にくる道」の行を指して言いました。「こっち選んだら、また靴下はけなくなるよ」。3年目は、利益の年にすると、その夜に決めました。

こっちを選んだら、また靴下がはけなくなる。

06 今日やること:来月の目標を、利益の額で1つ決める

今日やることは、1つだけです。来月の目標を、売上ではなく、利益の金額で1つ決めてください。 「来月の利益は◯◯万円」。それだけです。売上の目標があるなら、横に利益の目標を足してください。

利益で決めると、見える物が変わります。売上を増やす案と、経費を減らす案が、同じ土俵に乗る。「広告を打つ」と「使っていない物をやめる」が、初めて比べられるようになります。僕は8年間、片方の案しか見ていませんでした。

次の話は、3-2「使ってないサブスク5つで、給料1人分が消えてた」です。和子さんの提案で、スタッフ全員と1年分の経費を全部並べます。出てきた数字に、僕は言葉を失いました。

利益で決めると、2つの案が同じ土俵に乗る。

情報元

  • 講座「頑張っているけれど貧乏な経営者が一番多い」「売上は高い買い物」(講義ノートより)
  • 利益率10%=優良企業の目安(経営の一般論)

※ この物語はフィクションです。数字は試算で、将来の結果を約束するものではありません(くわしくは「この連載について」)